不祥事が起こったら

ここ最近、東芝、神戸製鋼、日産など、日本を牽引してきた大企業、財務省、文部科学省などの国民の見本となるべき省庁で、相次いで不祥事が発覚していますね。

無資格検査、検査データ改ざん、水増し不正会計、受託収賄、障がい者雇用水増しなど、様相は異なっていますが、そのほとんどが捏造、偽装などのようです。

不祥事が明るみに出ること自体、それは組織の膿が外に出ていく現象であり、健全な方向に向かうきっかけとなるので、その過ちをここでとやかく言うつもりはありません。

しかし、組織で失敗や過ちが起こってしまった場合、経営者や役員の対応の仕方の方が、むしろ大切になります。

月並みですが、逃げないこと。原因を究明し、正直に誠実に対処し、与えてしまった損害を償い、同じ過ちを起こさないように規律を入れたり、方針を明文化していくのがセオリーだと言えるでしょう。

不祥事の背景

ところで、こういった一連の不祥事の背景には、何が正しくて何が間違っているのかに関して、当事者と部外者との間にズレがあるように見えます。

ほとんどの場合、人は、自分の立場、自分の組織のフィルターを通して、主観的にものごとを判断する傾向があります。そして、自分、家族、組織などの身近な利益を優先しがちです。(同族企業などはまさにその例でしょう。)

そして、どの不祥事を取っても、特定の組織や部門、一部の人物が、短期的な利益、短期的な負荷の軽減、リスク回避に走ってしまっているのがわかります。

ですが、客観的かつ長い目で見ると、他の利害関係者に対しては、不利益や損害、不公平がもたらされる判断や結果になってしまっているケースがほとんどです。

つまり、不祥事の原因は、一部の個人や特定の組織の人々が、狭い世界で見いだした偏った解決策を「正しい」と思い込むことであり、それをより広い視野から見てみると、尋常でない解決策になってしまっているということです。

それは、客観的な視点というよりは、主観的な思い込み、あるいは、狭い視野から生じているとも言えるでしょう。(第三者委員会などが設置されるのは客観性を審査するためです。)

「正しさ」とは

では、これからの時代、私たちはどのように「正しさ」を追求していけばよいのでしょうか?

絶対的な「正しさ」の達成は不可能ですし、完全な「誤り」というものも存在しません。ものごとは通常「より正しい」か「より間違っている」かのどちらかだからです。

ゆえに、「正しさ」と「間違い」を判断していく場合、それは通常、相対的な尺度から見ていくことになります。例えば、

・組織がより良い方向に向かっているか
・より客観的な広い視野から判断がなされているか
・より多くの人々に受け入れられているか
・より多くの利害関係者に益がもたらされているか
・組織に関係する人々がより幸福で健康であるか

といった具合です。どの尺度においても、望ましいと思える状態にいればいるほど、より「正しい」と言うことになり、望ましくないと思う状態にいるほど、より「間違って」いるということになるでしょう。

しかし、ひとつだけ、白か黒かで判断しなければならない「正しさ」と「間違い」の指標があります。

それは「国や地域の法令を遵守しているかどうか」です。

中には、強制的で理不尽と思えるような法令もあるかもしれませんが、それが法律や条例として定められている限り、法治国家の一員としては、例外なく従わなければなりません。

「従うように一層の努力しています」といった相対的な尺度では許されないからです。

悪法とみなされる法令があれば、メディアや議員たちを巻き込んで、世論から変えていくこともできなくはありませんが、けっこうな時間と努力を要します。

とにかく、どんな法令であれ、有効なものとして成立している間は、独断的な解釈は通用しません。この点だけはしっかり押さえておかないと、悪気がなくても不祥事に繋がってしまうこともあり得るのです。

「正しさ」を追求する目的

「正しさ」とは、相手の間違いを攻撃したり、打ち負かすために固執するものではありません。自分たちの自信や誇りを保ち、そして、より良い生存や幸福を達成していくために追求するべきものです。

個人であれ、組織であれ、社会に貢献し、長期にわたって存続していく度合いに応じて、ものごとはスムーズになり、より「正しく」なっていきます。

逆に、落ちぶれ、悪くなっていく度合いに応じて、トラブルや問題が増え、より「間違って」いくことになります。

完璧な人間はいませんし、完璧な組織というものはありません。

しかし、「正しさ」を意識し、自ら過ちを修正し、規律を入れることができる個人や組織は存続していき、それができない個人や組織は衰退してしまうのは事実なのです。

不祥事は、組織の信用を傷つけます。経営者・役員は、その兆候に早い段階で気づいて処理することに責任を負っていることを自覚しておくべきです。

そして、万が一、不祥事が起こってしまったら、とくに経営者は、決して逃げ出したり、隠蔽せず、事実に直面するようにしてください。

トップが毅然とした態度で問題に立ち向かい、「正しさ」を追求する姿勢を示せば、組織に規律が入っていき、腐った領域は処理されていくでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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