「ノルマ」と「倫理」

皆さん、こんにちは。

かんぽ生命の不適切な保険販売の実態が次々と発覚し、昨日は、日本郵政グループの社長たちの謝罪会見が行われていましたね。

この不祥事は、顧客に不利益が生じた契約を合計で9万件以上行っていたというものですが、原因としては、日本郵政グループが旧態依然のビジネスモデルを脱却できなかった、厳しすぎる「ノルマ」を課していた、懲罰研修があった、販売手当に頼らざるを得ない状況があったなど、さまざまな要因があったようです。

しかし、まだ全容は明らかになっておらず、これから深く調査が行われるという段階だということです。そこで今回は、「ノルマ」そして「倫理」について少し考えてみたいと思います。

ノルマとプレッシャー

さて、私自身も、若い頃にノルマに達しないとペナルティーを科される職場で働いたことがあり、プレッシャーに負けて自分の信念に反して、顧客にとってベストでないことをして後悔したことがありますが、人というものは、追い詰められると間違った行動をとってしまうことがあり、保険業界に限らず、どの業界でもノルマのプレッシャーに耐えきれずに「過ち」を犯してしまった人々の事例は腐るほどありますよね。

しかし、当然のことながら、ノルマは通常、会社の経営計画やターゲットに基づいて、組織全体に割り当てられています。経営陣は、社員がノルマを達成することで目標に到達できるという期待の下にシナリオを描きますし、販売を奨励したり、評価制度を構築したりします。そういったことはすべて経営努力の一環であり、そうしないと業績が下がってしまい、銀行の評価も下がり、株主総会でも叩かれてしまうからです。

ただし、会社を維持していくためにどれだけのお金が必要なのか、どれだけ自己資本があり借入があるのか、そして、社員一人一人に支払われている人件費がいくらなのか、前年度を上回る成長曲線を描くための損益分岐点はどこなのか、といった財政の全体像を説明し納得した上で、現実的で達成可能なノルマを設定するのであれば、の話です。

ノルマが高すぎて非現実的になってしまうと、逆に組織は狂っていきます。人によって反応はマチマチでしょうが、会社を辞めてしまう、ノルマを無視する、あきらめる、どんな手を使ってもノルマを達成しようと考え始める、圧倒されてメンタルの問題を抱える、会社を攻撃するなどの反応が起こってくるでしょう。

ノルマは、個人の実績や能力より少し高く設定するのが妥当だと言われていますが、実際、一人一人の実力に見合った、本人が取り組もうと思える、程よい緊張感のあるゲームを作らないとうまく機能しません。高すぎるノルマは強制感や圧倒を産み出すでしょうし、低すぎるノルマは緊張感も能力も低下させてしまうでしょう。

ノルマやターゲットは、組織マネジメンの重要な部分ですから、これらをうまくコントロールできないと、会社は苦労することになります。

コンプライアンスと倫理

そして、もう一つ重要なのが「コンプライアンス」と「倫理」です。

「コンプライアンス」は、狭義的には「法令順守」と訳されています。(参照:郷原信郎氏『企業法とコンプライアンス 第3版』)「法令順守」は、文字通り、法を犯せば反社会的行為とみなされて、罰則や罰金を課されてしまうから、法令は遵守しなければなりませんよ、というアプローチです。それは、罰やペナルティーを土台とした強制的なコントロールであり、一部の人には効果があるかもしれません。

一方、「法令順守」だけでなく「社会的規範や企業倫理(モラル)を守ること」も「コンプライアンス」だとする広義的な考え方も存在し、こちらは「倫理法令順守」と呼ばれています。(参照:郷原信郎氏『企業法とコンプライアンス 第3版』)「倫理法令順守」は、「法令順守」の上に「倫理」という概念が上乗せされたものです。

「倫理」の定義は、「人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル。(引用:大辞泉)」であり、それは外部からの強制ではなく、個人の理性に基づく自己決定の性質を帯びています。(強制と自己決定では、明らかに自己決定の方が正気であり健全ですよね。)

このように「倫理」の概念が含まれるか否かで、「コンプライアンス」の意味は大きく変わってくるのです。道に例えると、単なる「法令順守」は、一歩踏み外せば即座に事故に繋がるギリギリの細くて危うい道となりますが、「倫理法令順守」は、「法令順守」のさらに上に「倫理的価値観」が加わった、より幅が広くてゆとりのある安全な道だと言えるでしょう。

実際、ほとんどの人は法を犯してはならないことはよくわかっています。にも拘わらず、こういった不祥事が起こる背景には、「倫理」もしくは「倫理基準」の欠如があるのでしょう。

「倫理観」は人によってバラバラですし、「ノルマ」と「倫理」は、時にとして対立して見えることがあるため、今までは、法令さえ守れば良しで済まされていました。

しかし、今後は「法令順守」だけでなく、「(独自の)企業倫理の確立と徹底」にも取り組み、両者を調和させなければ「ノルマ」と「倫理」の共存は難しくなり、競争には勝てなくなっていくでしょう。

「倫理」の教育

私も仕事柄、「倫理方針」に関してはいろいろ研究を続けていますが、ビジネスにおいては、今のところ以下のような概念を用いています。
「社会の中で顧客、組織の内外の人々、および社会環境と共存していくために、理性的かつ節度のある自己決定を行い、それらを実践していくこと。その前提条件として「自尊心」の確立が求められる。」

小難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、自分自身、お客様、仲間、関係者、自分を取り巻く世界の全体を考えた上で、つねに公平かつ最善の決定を行い、それを実践していくということです。

そしてもう一つ、「倫理」を確立する上で、欠かすことができないものが「自尊心」だと私は考えています。(ここでの「自尊心」は、単に「自分を大切に思う」という意味で使っています。)

自分を大切だと思えない人は、向上したり、規律を守ったり、社会貢献しようなどとは思えないわけで、「倫理」を学ぶ段階にはいないからです。まずは「自尊心」の確立を促し、その上で「倫理」の教育をしていかないとうまくいかないでしょう。

パフォーミアのシステムを使えば、そもそも「自尊心」や「倫理観」が良好な人、そうでない人を見極めることは可能です。

さらに、「チームビルディング研修」では、人材を見極める方法はもちろんのこと、組織の構築、マネジメント、社員に「自尊心」を抱かせる方法、「倫理」の基本概念など、組織を築いていくためのノウハウも学ぶことができます。

ここに受講者の声の一部シェアさせていただきます。
”研修の中で、「倫理」の概念を学びましたが、このデータの価値はとても大きかったと思います。仕事だけの人生では幸せとは言えないことも理解しました。パフォーミアの研修を通して、仕事に関することはもちろんのこと、どのようにしていけばより満足のいく人生を送れるのかを考える機会をもつことができました。とても充実した素晴らしい研修でした。<静岡県 金属加工 マネージャー>”

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適切なマネジメントを行い、組織に「倫理観」を浸透させていけば、経営は必ずスムースになっていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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